未払い賃金立替払制度

未払い賃金立替払制度とは?

「未払賃金立替払制度」とは、「賃金の支払の確保等に関する法律」(以下「賃確法」という。)に基づき、企業が「倒産」したために賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、その未払賃金の一定の範囲について、独立行政法人労働者健康福祉機構(以下「機構」という。)が事業主に代わって支払う制度です。



未払い賃金立替払制度の対象となる倒産とは?

未払賃金立替払制度の対象となる倒産とは次の場合をいいます。

(1) 法律上の倒産
   破産法に基づく破産手続きの開始、会社法に基づく特別清算の開始、民事再生法に基づく再生手続の開始又は会社更生法に基づく更生手続の開始について裁判所の決定又は命令があった場合
(2) 中小企業における事実上の倒産
   事業活動に著しい支障を生じたことにより、労働者に賃金を支払えない状態になったことについて労働基準監督署長の認定があった場合
具体的には、①事業活動が停止し、②再開する見込みがなく、③賃金支払能力がない状態になったことをいいます。

立替払を受けられる人とは?

立替払を受けることができるのは、次の要件を満たしている場合です。

(1) 使用者が
  1.  労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業で1年以上事業活動を行っていたこと(法人、個人の有無、労災保険の加入手続きの有無、保険料納付の有無は問いません。)。
  2.  法律上の倒産又は事実上の倒産に該当することとなったこと。
(2) 労働者が
  1.  倒産について裁判所への破産申立等(事実上の倒産の場合は、労働基準監督署長への認定申請)が行われた日の6か月前から2年の間に退職していること。
  2.  未払賃金があること(ただし、未払賃金の総額が2万円未満の場合は立替払を受けられません。)。



立替払の対象となる賃金

立替払の対象となる未払賃金は、退職日の6か月前の日から機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払日が到来している「定期賃金」及び「退職手当」で未払のものに限られます。
したがって、賞与その他臨時的に支払われる賃金、解雇予告手当、賃金に係る遅延利息、慰労金や祝金名目の恩恵的又は福利厚生上の給付、実費弁償としての旅費等は対象にはなりません。
なお、立替払の対象となる未払賃金は、税、社会保険料、その他の控除金の控除前の額です。ただし、その他の控除金のうち、事業主の債権に基づき、当該賃金から控除が予定されているもの(社宅料、会社製品の購入代金、貸付金返済金等)については控除します。



立替払が請求できる期間

裁判所の破産等の決定又は労働基準監督署長の倒産の認定があった日の翌日から起算して2年以内です。  
この期間を過ぎてしまった場合は立替払を受けることはできません。

 

立替払される額

立替払される賃金の額は、未払賃金総額の8割です。ただし、未払賃金総額には、退職日の年齢に応じて限度額が設けられており、未払賃金総額が限度額を超えるときはその限度額の8割となります。

 退職日における年齢 未払賃金総額の限度額 立替払上限額
  45歳以上 370万円 296万円
  30歳以上45歳未満 220万円 176万円
  30歳未満 110万円 88万円



立替払の請求手続

立替払の請求の手続については、倒産事由が法律上の倒産の場合と事実上の倒産の場合とでは異なります。

(1) 法律上の倒産の場合の手続は次のとおりです。
  1.  立替払請求人は、未払賃金総額等必要事項についての証明を管財人等に申請します。
   
破産等の区分
証明者
破産・会社更生
管財人
特別清算
清算人
民事再生
再生債務者等
  2.  管財人等から未払賃金の額等について証明書が交付されたら、立替払請求書及び退職所得の受給に関する申告書に必要事項を記入して機構に送付します。
なお、管財人等から未払賃金総額等の事項の全部又は一部について証明を受けられなかった場合は、その証明を受けられなかった事項について、所轄労働基準監督署長に確認申請をします。
以降の手続については(2)事実上の倒産の場合の手続と同じです。
  3.  機構は、立替払の決定を行い、立替払請求人に対して立替払決定通知書を送付するとともに、指定された金融機関(ただし、漁業協同組合は利用できません。)に振り込みます。
     
(2) 事実上の倒産の場合の手続は次のとおりです。
  1.  立替払請求人は、所轄労働基準監督署長に、当該事業場が事業活動を停止し、再開の見込みがなく、かつ、賃金支払能力がない状態にあることの認定の申請を行います。
認定申請書には、事業主の事業活動の状況等に関する事項を明らかにする資料を添付することとされています。
認定申請は、当該事業場を退職した立替払請求人が2人以上いる場合は、そのうちの1人が行えば足り、その効果はすべての退職労働者に及びます。また、認定申請は、当該事業場を退職した日の翌日から起算して6か月以内に行わなければなりません。
  2.  所轄労働基準監督署長から認定通知書が交付されたら、立替払請求人は、未払賃金総額等必要事項について、所轄労働基準監督署長に確認申請を行います。
確認申請書には、労働契約書、賃金台帳の写し、出勤簿の写し等未払賃金額等を証明する資料があれば添付することとされています。
  3.  所轄労働基準監督署長から確認通知書が交付されたら、立替払請求書及び退職所得の受給に関する申告書に必要事項を記入して機構に送付します。
  4.  機構は、立替払の決定を行い、立替払請求人に対して立替払決定通知書を送付するとともに、指定された金融機関(ただし、漁業協同組合は利用できません。)に振り込みます。

料 金 表

未払い賃金立替払請求書類作成・同行

着手金  21,000円

  +

成功報酬  未払い賃金額総額の15%(200,000円未満の場合は、31,500円)

 

※ 所轄の労基署への2回までの同行が含まれます。

 

「事実上の倒産」にあたるケースで、労働者側と経営者側が対立している場合、提出書類や証明にかなりの手間を要しますので、専門家に依頼することをお勧めいたします。