【H27介護報酬改定最新情報】訪問介護、全時間区分で基本報酬を減額 20分未満見直し

 訪問介護については、すべての時間区分で基本報酬を減額。身体介護の1時間未満は現行の404単位から388単位へ、生活援助の45分未満は191単位から183単位へ引き下げる(下記に詳細)。

 このほか、「特定事業所加算」に設ける新しい区分の要件として、要介護3以上など重度の利用者が6割以上いることを設定。また、ヘルパー2級のサ責にかかる減算を30%に増やすことや、要件を満たせばサ責の配置基準を緩和できることなども盛り込んだ。

 以下、公表された訪問介護の新たな報酬・基準の概要をまとめた。


(1)基本報酬の見直し

以下のとおり、基本報酬の見直しを行う。

身体介護が中心である場合、
 所要時間20分未満        171単位 ⇒ 165単位
 所要時間20分以上30分未満    255単位 ⇒ 245単位
 所要時間30分以上1時間未満   404単位 ⇒ 388単位

生活援助が中心である場合、
 所要時間20分以上45分未満    191単位 ⇒ 183単位
 所要時間45分以上        236単位 ⇒ 225単位
 通院等乗降介助          101単位 ⇒ 97単位

介護予防訪問介護
 介護予防訪問介護費(I)  1226単位/月 ⇒ 1168単位/月
 介護予防訪問介護費(II)  2452単位/月 ⇒ 2335単位/月
 介護予防訪問介護費(III)  3889単位/月 ⇒ 3704単位/月


(2)20分未満の身体介護の見直し

 在宅における中重度の要介護者の支援を促進するため、訪問介護における身体介護の時間区分の1つとして「20分未満」を位置付ける。

 また、現行の「定期巡回・随時対応サービスの指定を受けている」又は「実施に関する計画を策定している」場合について、日中と夜間・深夜・早朝の算定要件を共通のものとした上で、算定対象者を見直し、要介護1・2の利用者については、認知症等により、短時間の身体介護が定期的に必要と認められる場合には、算定を可能とする(要介護1・2の利用者に対する「20分未満の身体介護」の算定については、「定期巡回・随時対応サービスの指定を受けている」訪問介護事業所に限る)。

 この場合には、従前どおり、前回提供した訪問介護から概ね2時間以上の間隔を空けることを求めないが、「20分未満の身体介護」を算定する利用者に係る1月あたりの訪問介護費は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(I)(訪問看護サービスを行わない場合)における当該利用者の要介護度に対応する単位数の範囲内とする要件の見直しを行う。


・身体介護 20分未満 算定要件等
•身体介護の時間区分の1つとして「20分未満」を位置付ける
•全ての訪問介護事業所において算定が可能
•前回提供した訪問介護から概ね2時間以上の間隔を空けることが必要
•頻回の訪問(前回提供した訪問介護から概ね2時間以上の間隔を空けないもの)については、以下の全ての要件満たす場合に算定する

〈利用対象者〉

a 要介護1から要介護2の者であって認知症の利用者又は要介護3から要介護5の者であって障害高齢者の日常生活自立度ランクB~Cの利用者
b 当該利用者に係るサービス担当者会議が、3月に1度以上開催されており、当該会議において、1週間のうち5日以上、頻回の訪問を含む20分未満の身体介護が必要と認められた者

〈体制要件〉

a 常時、利用者又は家族等からの連絡に対応できる体制がある
b 次のいずれかに該当すること。

ア 定期巡回・随時対応サービスの指定を受けている
 イ 定期巡回・随時対応サービスの指定を受けていないが、実施の意思があり、実施に関する計画を策定している(要介護3から要介護5の利用者に限る)
・ 頻回の訪問を含む20分未満の身体介護算定する利用者に係る1月当たりの訪問介護費は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護費(I)(訪問看護サービスを行わない場合)の範囲内とする。


(3)サービス提供責任者の配置基準等の見直し

中重度の要介護者を重点的に受け入れるとともに、人員基準を上回る常勤のサービス提供責任者を配置する事業所に対する評価を行う。

特定事業所加算(IV)(新規) 所定単位数の100分の5に相当する単位数を加算


算定要件等
•人員基準に基づき置かなければならない常勤のサービス提供責任者数を上回る数の常勤のサービス提供責任者を配置していること(利用者数が80人未満の事業所に限る)【人材要件】
•サービス提供責任者全員に、サービス提供責任者業務の質の向上に資する個別研修計画が策定され、研修が実施または予定であること【体制要件】
•利用者総数のうち、要介護3以上、認知症自立度III以上の利用者が60%以上であること【重度対応加算】

 また、常勤のサービス提供責任者が3人以上であって、サービス提供責任者の業務に主として従事する者が1人以上配置されている事業所について、複数のサービス提供責任者が共同して利用者に関わる体制が構築されている場合や、利用者情報の共有などサービス提供責任者が行う業務の効率化が図られている場合には、サービス提供責任者の配置基準を「利用者50人に対して1人以上」とする見直しを行う。


(4)訪問介護員2級課程修了者であるサービス提供責任者に係る減算の取扱い

訪問介護員2級課程修了者であるサービス提供責任者に係る減算について見直しを行う。ただし、減算が適用される訪問介護事業所が、人員基準を満たす他の訪問介護事業所と統合し出張所(いわゆる「サテライト事業所」)となる場合は、2017年度末までの間、減算適用事業所を統合する訪問介護事業所全体について、当該減算を適用しない。

訪問介護員2級過程修了者であるサービス提供責任者に係る減算

 所定単位数に90/100を乗じた単位数 ⇒ 所定単位数に70/100を乗じた単位数

算定要件等
•訪問介護員2級課程修了者(2013年4月以降は介護職員初任者研修修了者)であるサービス提供責任者を配置していること
•減算が適用される訪問介護事業所が、人員基準を満たす他の訪問介護事業所と統合し出張所となるものとして、2015年度末までに都道府県知事に届け出た場合は、2017年度末までの間、減算適用事業所を統合する訪問介護事業所全体について、当該減算を適用しない


(5)生活機能向上連携加算の拡大

生活機能向上連携加算について、通所リハビリテーションのリハビリテーション専門職が利用者の居宅を訪問する際にサービス提供責任者が同行する等により、リハビリテーション専門職と共同して、利用者の身体状況等を評価し、生活機能の向上を目的とした訪問介護計画を策定した場合についても評価することとする要件の見直しを行う。

算定要件等
•サービス提供責任者が、指定訪問リハビリテーション事業所又は指定通所リハビリテーション事業所の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による指定訪問リハビリテーション又は指定訪問リハビリテーションの一環として利用者の自宅を訪問する際にサービス提供責任者が同行する等により、当該理学療法士等と共同して行ったアセスメント結果に基づき訪問介護計画を作成していること
•当該理学療法士等と連携して訪問介護計画に基づくサービスを提供していること
•当該計画に基づく初回の当該指定訪問介護が行われてから3ヵ月間、算定できること


(6)訪問介護と新総合事業を一体的に実施する場合の人員等の基準上の取扱い

訪問介護事業者が、訪問介護・新総合事業における第一号訪問事業を、同一の事業所において、一体的に実施する場合の人員、設備・運営の基準については、訪問介護・介護予防訪問介護を一体的に実施する場合の現行の基準に準ずるものとする。


(7)集合住宅に居住する利用者へのサービス提供

訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、訪問看護・訪問リハビリテーションについて、以下の場合の評価を見直す。

(ア)事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内の建物(養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に限る)に居住する利用者を訪問する場合は、当該建物に居住する人数に関わらず、当該利用者に対する報酬を減算する。

(イ)上記以外の建物に居住する利用者を訪問する場合は、当該建物に居住する利用者が一定数以上であるものについて、新たに減算する。

算定要件等

 集合住宅の居住者にサービス提供する場合に減算対象となる利用者は以下のとおりとする。
•事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物(養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に限る)に居住する者
•上記以外の範囲に所在する建物に居住する者(当該建物に居住する利用者の人数が1月あたり20人以上の場合)


平成27年度介護報酬(案).pdf
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厚生労働省「介護給付費分科会」が厚労相の平成26年度介護報酬改定に係る諮問を了承、社会保障審議会が答申

  • 消費税対応は改定率0.63%
  • 基本単位数へ上乗せ、特定入所者介護サービス費(居住費・食費等)は据え置き
  • 従来のサービス量を受けられるよう区分支給限度基準額を引上げ
  • 省令改正で、サービス事業所がインターネット回線で介護給付費等の請求可能に 

 

厚生労働省は1月15日に、社会保障審議会「介護給付費分科会」を開催した。 

 

この日は、(1)平成26年度介護報酬改定に係る諮問等(2)介護給付費等のインターネット請求化―などについて議論し、諮問について了承。社会保障審議会の西村会長に報告し、西村会長が了承する旨を田村厚生労働大臣に答申した。今後、告示改正等の作業を行い、4月1日から新単位数が施行されることとなる。 

 

◆消費税対応は改定率0.63%

 

(1)の平成26年度介護報酬改定については、消費増税対応となる26年度介護報酬改定について厚労省から対応案が示され、改定の単位数等を盛込んだ田村厚労大臣からの諮問書が示された。 

 

8%引上げ時の対応は

(i)改定率

(ii)介護報酬による対応

(iii)基準費用額、特定入所者介護サービス費(居住費・食費関係等)

(iv)区分支給限度基準額の見直し

 が4つの柱となっている。 

 

(i)では、消費税率8%への引上げに伴い、介護サービス施設・事業所に実質的な負担が生じないよう、消費税対応分を補てんするため、0.63%の介護報酬改定を行うことが示された。 

 

◆基本単位数へ上乗せ、特定入所者介護サービス費(居住費・食費等)は据置き 

 

(ii)の介護報酬の対応は、基本単位数への上乗せを基準としつつ、消費税負担が相当程度見込まれる加算があれば、それらにも上乗せを行う。 

 

基本単位数への上乗せ率は、各サービスの課税割合(人件費と非課税品目を除いた課税割合)に税率引上げ分を乗じて算出する。 

 

具体的には「基本単位数の上乗せ率=課税割合×(108÷105-1)」で算出される。 

 

厚労省当局から今回、課税割合が示されている。介護サービス全体では22.1%。 

 

個別のサービスでは、「介護老人福祉施設」19.7%、「介護老人保健施設」25.2%、「介護療養型医療施設」28.5%、「認知症対応型共同生活介護」13.5%、「訪問介護」17.5%、「訪問看護」16.4%、「通所介護」24.5%、「通所リハビリテーション」28.7%、「短期入所生活介護」17.4%、「居宅介護支援」14.6%、「小規模多機能型居宅介護」21.9%などとなっている。 

 

また加算については、基本単位数に対する割合で設定されている加算、福祉用具貸与に係る加算への上乗せ対応は行わない。その他の加算のうち、課税費用の割合が大きい(5割以上)加算については、基本単位数への上乗せ率と同様に課税費用に係る上乗せ対応をする。 

 

具体的には、介護老人保健施設と短期入所療養介護の「緊急時施設療養費」、介護老人保健施設の「所定疾患施設療養費」、介護療養型医療施設と短期入所療養介護の「特定診療費の重度療養管理」で上乗せ対応が行われる。 

 

いくつかのサービスについて新単位数を見てみると、次のようになっている。 

 

●訪問介護費

(身体介護中心の場合)

・所要時間20分未満 171単位(従前は170単位、以下同)

・所要時間20分以上30分未満 255単位(254単位)

・所要時間30分以上1時間未満 404単位(402単位)

・所要時間1時間以上 587単位(584単位)+30分を増すごとに83単位 

 

●訪問看護費

(訪問看護ステーションの場合)

・所要時間20分未満 318単位(316単位)

・所要時間30分未満 474単位(472単位)

・所要時間30分以上1時間未満 834単位(830単位)

・所要時間1時間以上1時間30分未満 1144単位(1138単位)

・理学療法士等による訪問(1回につき) 318単位(316単位)

 

●介護福祉施設サービス費(I)(特養ホーム)

・要介護1 580単位(577単位)

・要介護2 651単位(647単位)

・要介護3 723単位(719単位)

・要介護4 794単位(789単位)

・要介護5 863単位(858単位)

 

●介護保健施設サービス費(i)

・要介護1 716単位(710単位)

・要介護2 763単位(757単位)

・要介護3 826単位(820単位)

・要介護4 879単位(872単位)

・要介護5 932単位(925単位)

 

 

 

(iii)の基準費用額、特定入所者介護サービス費(居住費・食費関係等)については、食費・居住費の実態調査の結果を踏まえ据置かれる。また利用者の負担限度額については、入所者の所得状況を勘案して決めることから見直しは行われない。 

 

◆従来のサービス量を受けられるよう区分支給限度基準額を引上げ 

 

(iv)の区分支給限度基準額とは、居宅(在宅)サービス利用者が1ヵ月間に受けられる介護保険給付の上限額のことで、要介護度に応じて「要介護1では16万5800円」「要介護5では35万8300円」などと設定されている。 

 

改正では、消費税に伴う介護報酬の上乗せ対応を行うことにより、従来と同じサービス量を利用しているにも関わらず、区分支給限度基準額を超える利用者が新たに生じることなどから引上げが行われる。 

 

具体的には、「居宅介護サービス費等」および「介護予防サービス費等」については、次の通り引上げられる。

 

  • 要支援1:4970単位 → 5003単位
  • 要支援2:1万400単位 → 1万473単位
  • 要介護1:1万6580単位 → 1万6692単位
  • 要介護2:1万9480単位 → 1万9616単位
  • 要介護3:2万6750単位 → 2万6931単位
  • 要介護4:3万600単位 → 3万806単位
  • 要介護5:3万5830単位 → 3万6065単位

 

また「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護費」および「外部サービス利用型介護予防特定施設入居者生活介護費」については次の通り。

 

  • 要支援1:4970単位 → 5003単位
  • 要支援2:1万400単位 → 1万473単位
  • 要介護1:1万7024単位 → 1万7146単位
  • 要介護2:1万9091単位 → 1万9213単位
  • 要介護3:2万1280単位 → 2万1432単位
  • 要介護4:2万3347単位 → 2万3499単位
  • 要介護5:2万5475単位 → 2万5658単位

 

(i)~(iv)までを併せた、新しい介護報酬の算定の具体例として、介護老人保健福祉施設の場合を見てます。 

 

要介護4・所得段階第2段階の利用者で、ユニット型・定員31人以上の施設に入所しているケースでは、「ユニット型介護福祉施設サービス費(I)」872単位、食費・居住費が3350円で、現在1ヵ月あたりの費用(食費・居住費+サービス費)が36万6928円となっている。うち利用者負担は5万1784円(第2段階上限額)。 

 

これが、改定後には「ユニット型介護福祉施設サービス費(I)」が877単位に引上げられ、他方、食費・居住費は据置かれるため、1ヵ月あたりの費用は36万8448円と1520円増となる。ただし、利用者負担額は5万1784円(第2段階上限額)で同額になる。 

 

(2)の介護給付費等のインターネット請求化については、請求省令を改正すると報告。サービス事業所が国保連に介護給付費等の請求をする方法は、現在、ISDN回線による伝送・電子媒体(FD、MO、CD-R)・紙媒体とされているが、平成26年11月以降、伝送についてADSLや光ファイバー等のインターネット回線での請求を可能とする。 これに伴い、一定期間の経過措置を置き、伝送または電子媒体での請求を原則義務化するとしている。なお、事業所員が高齢などの理由により、伝送等での請求が困難な事業所等に配慮し例外措置も定められる。